「そもそも何によって為替が動くのか」をテーマに研究観察を行い、そこで得られた知見から予測を構成しました。ここでは、FXSEが根拠にしている理論と、FXSEを為替取引に活用する方法をご案内します。
1.分析理論(実需・投機の2要素で大半を表現できる理由)
為替値動きのほとんどを実需・投機の2大要素で理由付けできる点は「実需予測+投機実績合成指数/ASC」・「実需予測指数/COM」のチャートが為替レートと合致している状況から明らかです。ここでは「そもそもなぜ、金利や介入・金融緩和など為替に直接影響を与える他の要素がある中、実需・投機の2要素で大半を表現できるのか」について解説したいと思います。
実需は金利や外債・外国株投資も間接的にカバー
実需のメインはモノやサービスの購入対価支払いによる為替取引ですが、市場金利や金利・金融政策も「実需によって経済が動いた結果に対するアクション」ですので、実需の派生と考える事ができます。保険・年金の外債・外国株投資の開始と終了(※1)についても、金利・経済の結果を見て動く事を考えるとやはり実需の派生であると言えます。
つまり、ほとんどの要素の根底に実需がある事から、実需データを元にした予測がカバーできる範囲は非常に広いと考えています。
※1「保険・年金の投資終了」が緊急で発生した場合は実需と連動しません。東日本大震災時の保険金支払い・再建費用工面で海外資産の円転が必要になった際、実需・投機の推移と為替推移が全く異なるタイミングがありました(2011~2012年に観測)

投機は上下動で、為替介入も投機の一部として判断可能
投機は売り・買いの後に必ず買い戻し・売り戻しがあることから、為替相場には2週間~6ヶ月周期の上下動となる影響を及ぼしているケースが非常に多くなっています。
また、実需・投機以外の要素として「為替介入」がありますが、為替介入は「投機ポジションが大きく円売り・円買いどちらかに傾いた際、解消する方向に介入が入る」ケースが多い事から、投機の要素と一緒に判断することも可能です。
2.実需と投機の2要素で表現できなかった局面
過去25年で、実需と投機以外の理由で為替が動いたために、ASC指数が為替の動きに追従しなかった局面が8回ありました。今後の対策の為に、全局面の原因分析をご案内します。
市場消失 2008年10月(リーマンショック発生時)
リーマンショックとして知られている金融崩壊・信用収縮時に、ASC指数が合致しない局面がありました。
実需の支払先・請求先が破綻して本来の為替需要が消失した/投資商品の価値が消失した等の事由によります。
災害復旧資金手当て 2011年後半(東日本大震災後)
東日本大震災の後、保険金支払いや再建用資金の手当てに、海外資産の緊急取り崩しが観測されました。
緊急清算はFXSEの予測式で考慮できない内容の為、ASC指数が合致しない状況となりました。
市場消失の翌年 2021年後半(コロナショック翌年) / 2009年後半(リーマンショック翌年)
FXSE実需予測の予測式は、過去数年の推移を元に計算を行っております。市場消失の考慮は計算式に含まれておりませんので、消失の翌年はCOM/ASC指数ともに合致しない状況になりました。
為替ヘッジ 2024年4月~7月(円安進行後) / 2014年12月~2015年1月(緩和直後) / 2006年4月~6月(ゼロ金利解除)
円安が長く進行し、今後も進行が進むのでヘッジ見直しが必要とエコノミストに予想された局面(2024年)や、根底を揺るがすほどの大きな金融政策の変更があった局面(2014年・2006年)で、ヘッジの解除や設定が後から行われる事がありました。FXSEの実需予測は投資や為替予約も加味されていますが、後からのヘッジ設定は十分に加味できない事があります。そのため、COM/ASC指数ともに合致しない結果となりました。
時期ずれ 2010年
FXSEの実需予測が、実際の為替と比較して早くなる現象が出てしまった事があります。「結果がずれてしまう場合、遅れるよりは早い方が良い」との考えで、ずれる場合は早めになる様に調整している為です。2010年はほぼ全体に渡って1ヶ月早く予測してしまう結果となりました。
2010年の時期ずれ以外、いずれも特徴的な事象があった局面で発生した事がわかります。
そこで、以下の様に検討することで、実需・投機の2要因で表現できなくなる局面をある程度予測できると考えています。
- 金融政策変更:市場予測と異なる大規模変更で、為替ヘッジの追加・解除がありそうかどうか(発表後から3ヶ月程度影響)
- 金融ショック:リーマンショッククラスの破綻・市場消失が発生したかどうか(直後と、発生した翌年に影響が出る)
- パンデミックショック:コロナショッククラスの市場消失が発生したかどうか(発生した翌年に影響が出る)
- 震災ショック:東日本大震災クラスの災害が起きたかどうか(概ね発生2ヶ月後から、6ヶ月程度影響)
3.FXSE指数の活用方法
ここでは、FXSEが提供する独自の指数について、その活用例をご案内します。
実需
<準備中です、しばらくお待ちください>
実需予測指数はどのように計算しているか
FXSE分析用に、半年後までの実需指数を計算する「実需予測エンジン」が用いられています。その構造を端的に述べますと、予測材料は国際収支の特定科目(過去数年分)で、予測エンジン自体は固定の数式です。予測エンジンの数式各項に材料の数値を入力すると、予測値が算出されます。
開発には、私設研究所の持つ能力(流体力学・高度コンピュータ計算・金融知見・実需企業での実務)がフルに活用されました。
開発の詳しい経緯は、下記「【参考小話】 FXSEができるまで」をご覧ください。
【参考小話】FXSEができるまで ~ 研究の歴史
Analytics Systems Laboratories の金融研究は2007年に始まり、18年の歳月が経過しました。
完成までの間、当研究所がどのように試行錯誤し、どのような考え・手順で作り上げたか、読み物形式でご案内いたします。
- 予測研究の過程から ~ FXSEができるまで ~ 第1章 はじまりはテクニカル分析から
- 予測研究の過程から ~ FXSEができるまで ~ 第2章 根本的な分析へ ~ そもそも為替はなぜ動く
- 予測研究の過程から ~ FXSEができるまで ~ 第3章 投機による予測
- 予測研究の過程から ~ FXSEができるまで ~ 第4章 実需による予測
- 予測研究の過程から ~ FXSEができるまで ~ 第5章 実需と投機の相乗効果
- 予測研究の過程から ~ FXSEができるまで ~ 第6章 実需と投機以外の要素(1)信用収縮・外国投資
- 予測研究の過程から ~ FXSEができるまで ~ 第7章 実需と投機以外の要素(2)為替介入
- 予測研究の過程から ~ FXSEができるまで ~ 第8章 今後の展望